鍛冶町(かじまち)
包丁選び方あれこれ
 
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プロ使用の本格派が欲しい人へのご忠告。高級な包丁は、ひねりなどに弱く欠けやすい為、アマチュア向きではありません。使う人のレベルは中級以上と言ったところです。
 

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アマチュアには、比較的粘りが有るステンレス牛刀のようなものが 、割れたり欠けたりしにくい ので良いと思います。牛刀は研摩用の棒やすりで磨いているところを肉やさんで見ますが、簡単に研げて即刃が付きます。又、両刃の為、 アマチュア向けの挟んで研ぐような道具も使えます。
 

3 まれにプロの牛刀で鋼を付けた片刃の物がありますが、これはプロ用です。挟んで研ぐ道具には不向きです。
 
4 デパートで売っている包丁はプロにはお薦め出来ません。
刃が欠けたりクレームの対象と成る為、柔らかい刃やステンレスで作った薄刃の外国製などを主に仕入れています。プロ的なものも有ることはありますが、比較的刃は柔らかなものが多いようです。全てアマチュア用と考えたほうがいいようです。
 
5 アマチュア用だからといって切れ味については問題ありません。しかし、柔らかい刃のものはすぐ切れなくなります。逆に言えばこまめに研げば良いということです。
 
6 一般には砥石は中砥で充分です。これはどの刃物鍛冶も言うことで、高い物を買う必要はありません。但し砥石面はいつも平らにして使います。常にコンクリートで削り平らにしたり、砥石を磨く粗砥の様なものを揃えておくと便利です。曲がっているとプロがやっても上手くいきません。
 
7 包丁材質ですが、まず鍛冶屋さんの製法によって選ぶ材料が決まります。
出来合いの刃物用のステンレスや鋼、更には複合材と言う物があり、厚さも色々とあります。最近では金型などに使う鋼などを使う極端に硬い刃物を作る人もいますが、一般の砥石では無理で全て製造元で研ぐ形になりプロ用とも言えません。
 
8 比較的安いものには量産がきく出来合いの材料で打ち抜きという製法で作ります。これは包丁の形に切り抜き、刃を付けて柄を付けて完成です。
家庭用の包丁や牛刀などはほとんどこの製法です。材質に粘りがある為、薄く出来ます。少し高いものになると鍛える為に赤く熱して叩きます。従って組織が緻密になります。切れ味はかなり違ってきます。
 
9 切れ味を求める人は更に上の複合材、割り込み材を使います。出来合いの合板で、2枚合わせや3枚合わせになっています。切れ味は前者のものよりかなり良くはっきり違います。合わせている板はステンレスと鋼、鉄と鋼などで刃物を作る為に作った板です。腕の良い鍛冶屋さんですとかなり良い物を作ります。
しかしこうした包丁は洋食等では使われますが、切口なども重視する和食の料理人は使いません。
 
10 複合材は鋼を使っている為、切れ味も良い物が多いようです。本割り込みなどの表示があるので、素人の人達は総火造りだと思っているようです。しかし総火打の本割り込みであれば、安い価格ではありません。デパートなどで売っている刃物で本式の総火作りのものは無いといってもいいかも知れません。
 
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次に鋼そのものの種類ですが、比較的硬いものと柔らかいものとがあります。
刃物用の材質は青紙、白紙、黄紙、銀紙(ステンレス系)等が有ります。もちろん複合材の鋼も同様の鋼の種類があります。しかし総火造りとは組 織密度が異なり、複合材より総火打ちのほうが職人の腕が出ます。 同じ材質でも総火造りは、はるかに優れています。
 

12 鋼の色分けは成分、特に炭素量の違いであり、それぞれに何種類かあります。
作る側から言えば白や黄は玉鋼に似ていることから焼入れなど職人の技が ストレートに出やすいと言われていますから上手く使える人はこれが自慢となります。着鋼は簡単に行なえます。
 
13 青は長く切れつづける点で喜ばれます。しかし作る側からすれば軟鉄やステンレスに鋼を着鋼する場合難しいようです。鋼が刃の部分になります。各種類は成分が違う為、作る時の技が皆違います。厚手の物の場合、薄い刃の場合、長く切れてほしい場合、研ぎも楽しむ場合、切るより剥がすような切れ味が必要な場合、切るものでも鋼の材質を変えます。材質も作り方も研ぎ方も全て違って来ます。
従ってどんなベテランの鍛冶屋さんと言えども手探りになります。ゆえに経験の豊富な昔の鍛冶屋は腕が良かったと言われています。名工と言えども得手、不得手の材質があり、その使い方が上手いかどうかで腕の良し悪しが決まります。
 
14 刃物マニアがいますが、色々と良く知っています。青は硬いとか、白は難しいとか、所詮こんな話は素人であり、本で読んだ受け売りといえます。重要なことは、使う目的により鋼を変えるということであって、青が価格的に高いとすれば、手間が少しかかるといったことらしい。刀鍛冶の最高峰、吉原義人氏も同じようなことをいっていました。
 
15 次に鍛冶屋さんの気質も刃物を買う場合注意したい。気を付ける点は、総じて売り方が上手い人はたいした事がないようです。デパートで売っている刀鍛冶や、奇抜な材料で作っている事を自慢するような人は売りを中心に考えている人で、腕は信用出来ないと考えたほうがいいようです。
新聞や本に載ったりした物を見せたりしていますが、こうした記事などに振り回されないようにしたほうがいいと思います。取材する記者は何も分っていませんし、職人に聞いて書いている訳ですから参考程度で見て下さい。又、業界誌も参考程度に考えて下さい。悪くは絶対に書けません。
 
16 刀鍛冶として登録されている人は全国に400人以上います。数の多さに驚く人もいると思いますが、実際に作っている人はその半数もいません。刀を作れる人で包丁などを作る人もいますが、こうした人は大きな工場を持っています。
刀を打たない人はほとんどが刀工の名前で包丁やナイフを作っています。良い刃物を作る人は刀鍛冶の系列である場合が多く、そういう名工を多数知っています。
 
17 戦時中サーベルなどの需要から、工場の従業員に至るまで簡単にライセンスを取れた時代がありました。その為に刀工の名前を利用しようとする人が現在非常に多い訳です。
刀工で食べられる人は上位20〜30人程度と言えます。刀と包丁の技術はまったく別のものといえるほど異なります。
 
18 それと昔、有名な名前の刀鍛冶が何人かいましたが気になります。 現在、刀の世界でトップランクにいる人の中にはこうした末裔は誰も居ません。もちろん刀鍛冶としてやってはいますが頑張ってほしいものと考えています。
 
19 趣味のナイフのように包丁であえて手作りの味を強調して作っているような鍛冶屋の 品物は避けたほうが無難です。デパートで刀鍛冶といって包丁を売っているような人も、程度の低い刃物をかなり高く売っています。腹が立つのは、はっきり複合材とわかるものを 一般の人が知らないのをいいことに総火作りのように見せ、でこぼこの飾り打をして売っていることです。逆にデパートでも凄い職人が出ている場合もあります。結局人柄が刃物にも現われます。
 
20 本来複合材を使えば研ぎ面に鋼と鉄の境が真直ぐに出ますが、この材料を火床で赤らめて、斑点のように叩いて調整すれば波紋が乱れます。するとそれらしくなります。ナイフなどに用いる波形が綺麗なダマスカス製法のようなものです。
 
21 複合材はどう言う理由か分りませんが、刃先が細かく欠けたりしやすいようです。 きっちり叩いて作った総火作りの包丁は組織が緻密でこうした感じになりにくいのは確かです。
 
22 刃物用に作った材料を使い、打ち抜きの包丁でも実に上手に作る人もいます。結局職人の腕です。説明好きな職人もおり一概に言えませんが、売りが上手すぎる職人も要注意です。
 
23 結局職人の姿勢は価格にも表れます。複合材を使い化粧斑目を付け総火打ちのような金額で売るなど、とんでもない偽物もいます。
 
24 日本職人名工会はこうした職人のあらゆる情報を求めています。
 
25 価格とクオリティーで迷っている方には、使う人達に合わせて職人や道具をアドバイス致します。サイトに載っている道具だけではなく、メールで問い合わせて頂いても結構です。
掲載していない職人の作品についてもお答えしています。但しご購入の方を優先しますので御了承下さい。職人の活性化の為に行っていることがその理由です。
 
26 サイトに掲載している職人の刃物価格を参考にして自分の好みの品を指値で頂いても結構です。時として良いものを捜すこともできます。但しあくまでも誠意として行っていますので、対応は忙しくない時間を選びお答えしています。
 
27 色々と書いていると忘れてしまうもので、思い出したら又追加します。
   
鍛冶職人と刀鍛冶との違い
日本で唯一鋼から作るのは刀鍛冶。玉鋼を鍛えて使う。この刃を包丁等に使うと玉鋼ならではの味があるとの事です。この鋼は刀鍛冶以外手に入りにくいようです。一般の鍛冶職人は鋼を買って使うところが刀鍛冶とは大きく違います。こうした日本の鋼は安来鋼が代表で性質により青紙と白紙、そして黄紙に分かれ、さらに各3種に分かれます。目的によって鋼の性質を使い分けています。この鋼の最高を引き出せる職人が名工となります。したがって刀鍛冶が打ったナイフなどを通販などで売っていますが、刀鍛冶であれば玉鋼を期待しますし、平に一般鍛冶の手法であれば素晴しい鍛冶職人はいくらでもいます。
又、刃物の良さは鋼だけではありません。鉄の部分と鍛接しますがこの鉄が重要であるといいます。職人が使う道具など名前を持つ職人達は明治や江戸の鉄を使っています。叉、大正時代などの外国の鉄もこれに類似しています。職人によっては古い鉄を集めたり、古い建物の鉄骨等まで買い付けています。この中に素晴しい鉄があるとの事です。こうした鉄は成分的にざらついて砥石にかかりやすく簡単にへる為、鋼の刃が即出て切れ味が簡単にもどるという理由です。特にカンナなど厚手の道具には有効です。
   

刀について
刀は廃刀令により、軍刀などだけに集約され、やがて作る事も禁止されました。ある職人は野鍛冶に、ある職人は大工道具にと変わりその中から優れた鍛冶職人が生まれています。
現在は美術刀として許可され、全ての刀鍛冶が組織としてまとまっています。昔あまりにも有名であった刀鍛冶は、時代の流れの中で腕がついていけず、又、口伝や諸事情から現在は無名の刀鍛冶のランクの中で頑張っています。残念なことですが奮起して欲しいと思っています。
戦後多くの刀がアメリカに持ち帰られていますが、その多くが軍刀でほとんどがナマクラということです。

   
理美容鋏
剃刀のような切れ味を要求される理美容鋏は、TVなどでカリスマ美容師が切ると言うより触れると切れていくマジシャンのような技を見せ私達を驚嘆させる。今や、海外そしてドイツの美容師まで日本から必ずお土産に買っていくという。今さらではあるが日本の人の技文化に対する認識の甘さが気になっている。
   
鋏に使う鋼について
日本の鋼はその性質により、青、白、黄紙などに分れます。ラシャ鋏や植木鋏などは主に白を使います。青は切れ味が良い変わりに硬く、切れなくなり始めると先が丸くなり滑ってまるで切れなくなります。白はねばりがあり、鋏は刃先の擦り合わせで互いに研がれていくという現象が起きて切れ味が変わりにくいという利点がありうまく使われます。又、各鋼の番号の違いや職人の腕でも使い方が変わってきます。あくまでもその職人さんと使われる目的、使っている砥石などでも違ってくるそうです。又、鋏は擦り合わせが命ですから、研ぐ場合も軸をはずして片側ずつ研ぎます。鋏の研げる人が研いでも難しいものです。作った職人さんにお願いすればほとんど新品になって帰ってきます。
   
刃物に使う鉄について
良い道具ほど鍛接する鉄は柔らかい物を使います。その為に昔の鉄を探します。錆びにくいといった性質も有ります。刃物の全てを硬くしてしまうと研ぐのに時間がかかりますが、柔らかい鉄であれば鍛接した鋼がすぐに出て刃を付けることが出来ます。したがって昔からの鍛冶屋は江戸時代頃の鉄を集め鋼同様に大切にして持っています。
   
現在の刀鍛冶
刀鍛冶を自認するものは、全員登録され、美術刀剣といった枠の管理下で作刀可能となっている。従って刀鍛冶を自認し、実際に刀を打っているならば必ずここに参加している。しかし調査の結果、昔の名刀(具体的に名を挙げれば大方の人はご存知であろう)の刀鍛冶の名前が日本職人名工会参加候補として殆ど挙がってこなかった。相談役に聞いてみたら現在もいるとのことであり、正直な所、こうした人達に参加をお願いしたかった。実に残念である。ともかく今後を期待したいし、奮起してほしいと切にお願いする次第である。
もちろんTVなどで放送され高く持ち上げられている末裔もいたが、これは番組を作る側にも問題があり、調査不足と知名度による視聴率の関係から評価したものと考えている。
しかも作った刀が国宝的な形で神社などに納められているなどと錯覚するような表現もあったが、刀剣の国宝は確か600年以上の歴史を必要とする等の規定がある。
こうしたいい加減な番組作りの風潮が、この問題に関らず、巷の物作りにも現れている。嘘が実に多い。日本職人名工会としては日本の技を軽んじるものとして問題視している。日本の作刀技術は世界に誇る類を見ない刃物の技の頂点、ともかく刀鍛冶になった以上、その自覚も大切である。甘い技術で自らを振り返ることもなく、マスコミに顔を出す事は、その歴史や祖先に申し訳が出来るのかどうか、気になるところである。
   
鋼の青紙について
鋼の種類は、例えば一般的なものでは、青紙、白紙、黄紙とあり、それぞれが更に1〜3に区分されます。巷ではこの鋼の種類を問題視しているようですが、多くの職人さんの意見をまとめた日本職人名工会としての結論は、どの鋼を選ぶかは、使う目的やどういう人が使うか(例えばプロの料理人が使う包丁を、一般の人が使うと刃こぼれをおこす。)によって違ってくるものであり、また製品の出来の良し悪しは結局、職人の腕によるところが大であるということです。
鋼は本来その目的に応じて使い分ける性質のもので、青だと高く売れると言う間違った風潮が一般的に流れており、販売する側もこの期待に応えて、青紙の製品をかなり差を付け高く売る習慣となっています。残念なことです。従ってどの親方も青を使わざるを得なくなるといった現状があるようです。  
   
和釘について(白鷹氏より)
和釘の形状は四角。昔の鉄は不純物が多くこれを叩き出す為に折り返して鍛えた。1000年持つ秘密は何層にもなった積層が腐食を止める働きがあるため。  現在の洋釘は、鉄を穴に通しただけで作る為表面が錆びると数十年で中まで腐る。昔の材料を使う事ができない為、今は純度の高い柔らかい鉄を使う。昔のように砂鉄  から鍛えたのでは一本何万円となる。そこで現代の鉄を如何にしたら昔の和釘のように柔らかに木目に馴染みながら少し歪むぐらいに出来るのか。現代の鉄は逆に純度  が高すぎる。従って炭素を少し増やし錆の原因となる硫黄、マンガン、燐、シリコンなどを飛ばすことが必要となる。これらは東北大学の井垣名誉教授とNHKの技術  陣に頼んで装置を作って貰ったと言う。1000年持たせられた更なる秘密は、建造物に使われている樹齢1000年以上の檜の油が、釘をしっかりと保護していたことで  ある。和釘を抜くと頭は腐っていても中は打ち込んだ時そのままに青々としている。それと何世紀にも亘る仏教に対する敬虔な気持ちから、一般の人々と職人の技とで  支えてこられたと言うべきか。

和釘は時代によって違う。
 
 
飛鳥文化 大陸北方の馬蹄釘、蹄鉄を打ちつける釘と同じ形状。北魏の文化が百済経由で飛鳥に繋がる。法隆寺の釘は太めで首から胴に向かいゆるやかに細くなる。頭が錆て落ちても木を支えることが出来る。仏教を通じて世の中を良くしていく黎明期の真摯な姿勢が釘にも見える。1300年建物の構造を守る。
白鳳文化   釘も洗練されてくる。江南文化、唐の長安に世界の文化と技術が集まり練り上げられた融合文化、日本へは東シナ海経由で。従ってこの頃のローマの釘も薬師寺の釘に似ている。白鷹氏はこの時代に釘が最も完成されたと言う。仏様のお顔も飛鳥とは異なり妖艶で健康体、平安のようにぶよぶよしていない。
天平文化   釘は少し細くなる。奈良を早急に長安の都の様にしようとした為、大工仕事が多く焦りが出てきます。急ぐために釘を細くして割れを防いだことが考えられる。
平安文化   頭部構造も省略(皆折・かいおれ)化される。法隆寺などでは絶対に使われなかった釘ですが堂々と使われている。職人は皆な嫌々働かされている姿が見える。
桃山文化   さらに釘は貧弱になっていく。納屋衆、成金文化で華やかに外見を繕う。
江戸文化   さらにひどくなる。手抜きが堂々と行われていく。柱も釘も細く長さもいい加減になる。
明治文化   もっとひどくなる。
昭和から
 平成文化
  材質工法すべて貧弱、あわせて洋釘のお粗末。さらに時代はピンタッカーホチキス止めとなる。
   
刀総論
刀は明治の廃刀令により作る事が出来なくなった。戦時にはサーベルを作ったりしていたが、一部の刀鍛冶はその腕を落とす事なく技を鍛え続けていた。その後美術刀剣として作刀が可能となった。
財団法人日本美術刀剣保存協会が文化庁管轄で作られ、傘下に全日本刀剣協会、研摩技術保存協会、外装技術保存会の三匠会を有し、古来の伝統を守るべく日々研鑽している。作品コンクールが三匠会を対象として文化庁立ち会いの下、毎年行われている。審査によって特別賞、優秀賞、努力賞、入選者が選ばれ、同時に人間国宝と特別ランクの無監査の作品が展示される。刀鍛冶と名乗る刀匠は300名〜400名といわれているが、仲々入選するのも難しいコンクールであるが、全体的に年々腕が上がってきているとのことである。
日本刀の作刀技術と研ぎの技術は、通常の鍛冶の技術に比べ遥かに手間がかかり、仕上がりも鏡面で鉄の流れがハッキリと分り、他の刃物には類を見ない技を必要とする。柔らかな鉄と玉鋼からなる日本刀は、砂鉄から作る玉鋼をタタラといって独自の製鉄技術を駆使して作る。刀鍛冶が始めに玉鋼を鍛える為に、二つ折りにする時は、お菓子の粟おこしの様な状態でボロッと折れ、我々素人がイメージする鋼とは程遠い形をしている。玉鋼は松炭を使って加熱し、赤くして鍛える。この温度調整が難しい。
鋼から作れるのは刀鍛冶だけで、玉鋼は管理下におかれ 一般の鍛冶職人は扱えない。鋼は出来合いの物を使う。それが青紙とか白紙とか黄紙とか言われている物である。
   
包丁選びと研ぎ方入門
包丁を研ぐ。まず砥石は中砥一本で準備OK。
 
1 自分で使う包丁であれば1000円程度の中砥で充分です。仕上砥は不要。中砥は減りが早いのですが、それだけ引っ掛かって研げている証拠です。片刃を研ぐ場合は必ず包丁の刃面の研いである側に合わせて研いで下さい。鋼の付け方が片刃と両刃で違うことが理由です。
2 鉄則として砥石の面は絶対平らにする事。
磨り減って歪んだ砥石を使い『上手く行かない、難しい』などと言う人 がいますが、これではプロでも出来ません。
コンクリートの床や道路で擦って、まず平らにします。車の通行量が多い所ではすきを見て擦ります。(冗談です。絶対やめましょう)
“刃物の研ぎは砥石のメンテナンス”と言い切っても過言ではありません。
3 刃物の角度については一定をほぼ保てば充分。
正直、人によって違います。完成の目安は、研いでいると反対側にバリと言われ皮膚感覚でわかる程度の返りが出てきます。刃と直角方向に指腹で軽く当てると引っ掛かるのでわかります。後はこのバリを取る程度に反対側を砥石で優しくあしらいます。これで完成です。
バリをボロで軽く落としても良いぐらいと考えて下さい。くれぐれも怪我のないよう集中し作業する事。切れると言う事だけを考えればそれこそ数回当たれば良い程度と考えて下さい。包丁は愛情を持って出来るだけ長く大切に使いたいものです。家庭で使うのでしたら包丁も一生物ですから料理の腕に覚えのある人は、良い包丁を使って下さい。切れ味が良いのは当たり前ですがともかく気分が違います。
4 家庭用専門の刃物は材質が柔らかく作られています。
柔らかく粘りがある為、薄くして軽く出来るメリットが有り、柔らかいので研ぎやすく即刃が付きます。こうした薄い包丁を研ぐ場合は、比較的鈍角に研いでも良いようです。シャープな角度で研ぐと薄くなるので、初めは切れてもすぐ切れなくなります。反面、鈍角でのあたりは多少しなりにくくなるので研ぎやすいようです。
5 購入者が素人の場合、ハッキリ言って 包丁の使い方が、硬いプロ用包丁では上手く行かず、ねじれの入るような使い方をすれば即、刃こぼれしたり割れてしまったりと問題がおきます。デパートなど素人を相手にする販売店では、“割れるような物を売っているのか”とクレームが多く、店の信用から、柔らかい鋼の包丁、ステンレス系の包丁をメインに置いています。そして、薄さを逆に利用し、サーベルのようにしなる鋼とか、メリットとして認識させるなどのテクニックで売ります。
有名な包丁程こうした傾向にあります。家庭用包丁はこの代表格です。逆に言えば家庭用の包丁は、価格と扱い易いやすさなどを重視する包丁です。プロの包丁は目的に合わせて最 高の切れ味を引き出す物です。当然プロの仕事は多面性があり、目的によっては、切れることより、粘りのある刃を必要とする作業もあると言うことです。
6 研ぐ道具で、挟んで引くだけの簡単な道具があります。
両刃の牛刀など両側から研ぐ刃の包丁にはまあ良いと思います。しかし片側だけを研いである包丁にはお薦め出来ません。
どうせ安い包丁だから、その時だけ切れればいいといった発想で作られている便利品です。少なくても日本職人名工会の職人のどの包丁でも正直あまりお薦めはしません。
7 まとめ
包丁を買う場合、プロ使用か家庭用かを確認して買って下さい。プロ用は切れ味が鋭く、刃も硬くできています。当然刃持ちがよく長切れが特徴です。
研ぎも硬いので大変です。包丁の鉄の材料費も高く家庭用の鋼の3倍から4倍します。素人用の包丁とプロ用の包丁とは違うものと考えて下さい。もちろん製造方法も大分違います。
日本職人名工会の職人もこうした使う側の環境から、家庭用のクオリティーを真剣に追求する鍛冶とプロ用の刃物鍛冶 、そして大工用刃物の鍛冶、 山仕事の鍛冶、など様々な信頼出来る専門の鍛冶職人が参加しています。
使う側に合った理想の名工を選ぶことができます。最後に研ぎですが家庭で使う場合、最高の包丁でも、家庭用の包丁でも1000円程度の中砥石を一つ揃て置けば充分です。