中国の天津美術博物館が認めた紫雲石の硯
石は、紫雲状の斑点や緑色をした模様が入り、変化があって見応えのある綺麗なものだ。石目は薄板が重なっている。
性質は輝緑凝灰石で、かの有名な端渓石と同系、学術的、材質的にも名石と認めるところである。摩墨も早く細やかで暖かく気品のある墨頃から水墨画など幅広い適合性がある。中国の名硯を高価で買い持つ人に、石の説明をいくらしても“違う”の一点張りであるが、残念ながら同じだ。
気の毒なのは.中国の硯のバイヤーが現地で買い付け、5倍程度の法外な利益を乗せて販売している事実を見る時、その嘘くささから考え、紫雲石は非常に貴重であると思う。もう一つ、冷静に現状を捉えれば、嘘くさい隣国の現実もあり、中国当地の書家が繊細な日本の硯や筆に興味を持つことも納得出来る。背景と状況を考えない単なるマニアになってはならない。
痛快なのは、熊谷氏の硯が中国の天津美術博物館に参考硯として依頼され 納め感謝状を頂いているのである。
特に線の美しさと滑らかさを感じさせる作品はシンプルでありながら独特の雰囲気を感じさせる。高野山や京都などのお寺さんや館長が使うことでもうなずける。氏の技は多くの実績がそれを物語っている。さらに凄いのは元気であること、現在80才を超えているが創作意欲もあり、何より常に自然体で無理の無い本物である。
■ 歴史
鎌倉時代に旅の僧侶が、大船渡長安寺に立ち寄り、石を硯として使用したのが始まり。その後、鎌倉へ持ち帰り時の将軍に献上し、その美しさから紫雲石硯と命名された。
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