刀への作意を完璧に表現したい気持はどの刀匠も同じですが、個々の努力や才能などから鍛えた刀の質に違いが表れます。これを判断するとなると、選定の極意を極める必要があり並み大抵なことではありません。名工会は、優れた職人を見極める方法として、腕に比例した自己研鑽の度合いを捉えます。この視点と優れた刀とは比例する傾向にあり、“精神や人格”などに違いが現れます。
ここがまずポイントです。さらに道を極めていく場合、下記のような基本となる立ち位置があり、判断は微妙で慎重さを要します。
1は、天才的な刀匠であり、より優れた後世に残る刀を期待します。
2は、技に味と質を求める刀匠で、求める作意は各自異なります。その研鑽度は高く、熱意が技にも精神にも表れます。その志向の高さに比例し、人の手本となれる要素が蓄積されていくようです。このタイプは,更に2種に分けられます。一つは、現代の立場から理想の刀を追求する刀匠で、材質研究に科学的メスを加えるなど多面性を持つ刀鍛冶です。
二つめは、時代に生きた過去の刀匠達と共に“研鑽する意識”を持ち、その経過を繋ぎながら現代に生きる刀匠です。
3は、生計面から刀以外の“売れる刃物を作る”ことも行いますが、刃物として大きく括れば、現在、ナイフの世界などは、未熟な技も横行しており、その基準を正す意味から考えれば、手本として否定する要素はありません。
4は、基礎技の修得、人間性などを含め,今後、研鑽により期待出来る立場にいる刀匠です。当然ながら上記区分は明確に分けられるものではありません。主たる姿勢で捉えます。
松田刀匠は、言動から2の二、後者の代表的存在に有り実に希少です。“自己に負けまいとする精神”は強気な張りに表れ、そこに実践が伴うことで、道を追求する“意識の高い物造りの姿勢”を感じます。
人間が考える創造の本質は、異種の挑戦であってもその根底は同じであるという思いから、絵画や音の世界など、異種のジャンルを通し自己を刺激し、ヒント、感性、姿勢などを捉え、常に自己を確認しながら高めるといったことも実践する。その結果は姿勢と技に表れ、刀身に弱光が射す時、色気すら感じる妖しさを映しています。この地金造りが一つの答えであり、その経過を見せるものであります。美術刀剣の時代に、ここにこだわらない刀を打つことは、強い信念と地道な努力が不可欠であり、技的には、炭素量、わかし技、研ぎ味、作風など過去の刀匠を彷佛させる研鑽振りを見せています。
今後を大いに注目して行きたい日本を代表できる刀匠のひとりであると思われます。 ■ 歴史
刀鍛冶の職業としては平安時代 |