東京銀器の代表とも言える産業美術系職人である。
茶釜もやかんも驚く程のハイグレードな美しさで、何故か色気を漂わせる理屈抜の鍛金の代表格。作品は一枚の板を打って形を作り、独自の技術でさらに打ち出され整然と並ぶ霰(細かい凸起部)は技術的にも驚嘆に値する。
名工の名をほしいままにした父に、石黒氏は師事し腕を磨いた。父の時代とは多少技術的には違うが、昔ながらの技は父に及ばないと言う。父から継承した完璧を追求する姿勢はぐい飲みなど安価な物の技にも現れる。内側の打目を滑らかにする為に二重にしている。しかし最近では手作りの良さを出す為に、打ち目を少し残しておいたほうが良いのかもと語る。現在の石黒さんの作品には打ち目すら感じない磨きがかかり、完璧な仕上がりとなっている。こうした技術を使って工芸展の作品を作るとなると、金工は、他の職種と違い作品ひとつひとつに時間がかかり、何ヶ月もかかりっきりになる関係から当然仕事も出来ず、又、何度かやり直しをして良い物をと言った他の職種のような事もまったく出来ない。従って始めたものが常に決定作品となる。作品を作る職人の苦労は大変であると思える。
昔は作る先から売れてしまう時代があったが、遥かな夢となりましたと結んだ。石黒氏の作品は業界全体に影響を与えている。
■ 歴史
江戸時代に多彩な技術、技法が確立された。 |