職人の住む町
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初めて木島師の彫を見たのは江戸博物館。安藤広重の江戸百景、安宅大橋であった。まず驚いたのは雨の彫、定規を使わず交差するにわか雨、木島氏ならではの冴えを見せる。細くても太くてもいけない彫であり、雨という活きた直線は、美人画の後れ毛などの曲線同様の難しい彫で、分ってくれば来る程すごい。又、摺師との戦いとも言える技の応酬は信頼感でのみ達成出来るものと思えた。誰からもその腕を信頼され認められている証でもある。彫師としての眼は絵を見た瞬間、何版で摺り分けるかを見抜く。素人にはただただ驚きである。版の数は摺師の腕や彫師の腕によっても違ってしまうとのこと。
正に彫師の代表格であり、木版界の重鎮である。希代の名工、大倉半兵衛3代目、4代目が師であり当時から木島氏の才能はかなりのものであったと思われる。木島氏がわずか17歳の時に彫ったという墨版を見せてもらい又驚いた。版を摺らせてくれるということで、びっくりの初体験であった。木島氏と茶碗酒を交わしながら実に楽しく貴重なひとときを過ごさせて頂いた。

■ 歴史
元禄時代、奥村正信の時代。1700年から約300年。


  大倉半兵衛に15歳の時に師事しました。廊下の拭き掃除から始まって、仕事場の窓拭き、子守りなどもさせられました。10年間厳しく修業しました。始めは長唄の文字を彫る事から始めます。書文字は曲っている為、小刀がすぐ折れます。手首の使い方や力の入れ方、硬い木ですから手が震えたりすると又折れてしまいます。こうした練習でもある程度コツを覚えるだけでも一年以上かかります。
  特徴というより、難しいやりがいのある仕事を頂く事が多いので、難しい反面、闘志も燃えますね。あくまでも絵師の忠実な再現をする事が仕事ですから、彫師としてはこれが特徴でもあります。それと木版画一筋にやってこられたことも彫師名利に尽きます。有り難いことです。
  伝統的な彫りの技を守り、絵師の独特な筆のタッチとその絵の心が生きるように彫っています。ともかく絵の先生に、喜んでいただければと心を込めて彫っています。
  世界でも珍しい多色摺り木版技術を行うという誇りを持って、きっちり基礎を勉強し伝統の技を継承してほしい。

 

職人名 木島重男(きじま・しげお)
雅号又は銘  
生年月日 昭和12年3月26日
職種(種) 浮世絵
作品(アイテム) 浮世絵
技数(積)
弟子入りしてから手伝えるような状態になるまでの期間
手伝うことは色々とありますが、小刀の研ぐことを始めたとします。版木に刀を入れて1cmも引くと先が折れ、又研いでの繰り返しです。此の繰り返しが基礎練習ですから大変です。結局その人のセンスで決まります。いくらやっても無理な人もいます。
版木は桜の木や柘植の木で大変硬いものです。従って細かい彫りを必要とする版などは選ばなくてはなりません。それと何枚の版木で摺るのかなども以外に難しいものです。何年やってもセンスの無い人や神経が行き届かない人などは無理ですね。
技の種類や工程
絵師の絵の複滋を色分けした枚数の板にゼラチンで貼り彫っていきます。絵によって濃淡やぼかしなど、合わせて10数枚、20数枚と彫ることになります。こうして彫る木版は摺師がぴっちりと重ねて摺れるように彫っていきます。
摺師は色づくりが腕の見せ所です。彫師は頭彫りで腕がわかります。原画と同じに摺り上げるには彫りと摺りが完璧でなければ描いた先生には喜んでもらえません。
現在の立場(役) 生涯現役
次代 他  


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