初めて木島師の彫を見たのは江戸博物館。安藤広重の江戸百景、安宅大橋であった。まず驚いたのは雨の彫、定規を使わず交差するにわか雨、木島氏ならではの冴えを見せる。細くても太くてもいけない彫であり、雨という活きた直線は、美人画の後れ毛などの曲線同様の難しい彫で、分ってくれば来る程すごい。又、摺師との戦いとも言える技の応酬は信頼感でのみ達成出来るものと思えた。誰からもその腕を信頼され認められている証でもある。彫師としての眼は絵を見た瞬間、何版で摺り分けるかを見抜く。素人にはただただ驚きである。版の数は摺師の腕や彫師の腕によっても違ってしまうとのこと。
正に彫師の代表格であり、木版界の重鎮である。希代の名工、大倉半兵衛3代目、4代目が師であり当時から木島氏の才能はかなりのものであったと思われる。木島氏がわずか17歳の時に彫ったという墨版を見せてもらい又驚いた。版を摺らせてくれるということで、びっくりの初体験であった。木島氏と茶碗酒を交わしながら実に楽しく貴重なひとときを過ごさせて頂いた。
■ 歴史
元禄時代、奥村正信の時代。1700年から約300年。 |