職人の住む町
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小学校4年生の時の文字を見ると今日の片鱗がうかがえ、なるほどと納得する。
何時でも楽しい感じの明るい親方である。日本棋院の専属の書家であるが、常に平常心を保つ訓練が出来ているのだろう。親方にはどうして知り合ったのか分からないが、書道とは全く関係ない駅前でのビラ配り職人の針生氏を中心とする仲間がいる。仲間は全てユニークで心優しい人達である。ここでの集いでは、親方の別の一面を見る。自作の浪曲である。
実に楽しそうに演ずる。気の置けない仲間であるから、やんややんやで大騒ぎ。これが出なければおさまらない。何度聞いてもそうなるが、皆んな納得している。上機嫌である。
実に達観し、常に日々楽しくを心掛けている。奥さんとの仲が良く必ず一緒である。

  書を始めたきっかけは、たしか昭和14年か15年、小学校2年生の時です。先生から素晴らしい字を書いた人がいますと言われ自分であると信じていました。当時の私はお習字に関しては絶対的な自信を持っていました。書いた文字は“白い雲、青い空”でした。それが自分ではなく、他の人でした。悔しかった。
教室を飛び出してトイレで泣いていたら先生が来て、悔し泣きは最も大切な成長の原動力であるから、恥ずかしいことではないと言われました。可能性や努力といったような内容だったと思いますが、話をして励ましてくれました。それからの私は、以前にも増して興味は全て、文字を書くこととなり、全力投球。当時“書き方”という本が配られましたが、それを手に入れると、自分で積極的に進めてマスターしていきました。4年の頃は、写真に有るような字を書いていました。時は東条英機の時代、軍国主義、すべて富国強兵のキャッチフレーズばかり書かされました。認められ入賞し、軍用機に乗せて頂き、空から見た町が印象的でした。当時は自慢の出来事でした。
  私は今、日本棋院の専属の書家として、仕事をしていますが、一方では、昔からの当て字の研究をしてきました。
例えば寿司、鮨、鮓などありますが、寿司と言う字は当て字で、目出たい文字を繋げたものです。そこで私は、御夫婦の祝い文字を徹底研究し、祝意文字を金婚式や銀婚式などに色紙や掛け軸にするなど喜ばれています。
御夫婦が紡いできた味わいと、これからの穏やかな日々を考え、そして人類と共に喜怒哀楽を連綿と綴ってきた文字の歴史の中で、本来の文字のあり方を加味し、思いを照らし合わせ、祝意から一体文を作ります。当て字とは時代を繁栄する文化であると考えています。
 
  文字を書くには、常に精神状態を集中することが必要です。穏やかに、激しく、優しく等、気持ちが筆に伝わっていきます。これは書を始める時の基本で最も大切なことです。
書は心であり反映します。どの職業でもそれは同じであろうかとも思います。平常心は、体と心のバランスです。これを保つことを心掛けています。
   

 

職人名 根本時雄(ねもと ときお)
雅号又は銘  
生年月日 昭和6年7月16日
職種(種) 書家
作品(アイテム)  
技数(積)
次代、素人から始めて手伝えるような状態になるまでの期間
技の種類や工程
白と黒の技法
現在の立場(役) 現役
次代 他  


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