武道具は具足と呼ばれ本来甲冑を言うが、甲冑には皮が随所に使われている。こうした皮は昔、インドのコロマンデル地方のサントメから渡来した皮で漆を塗った皮であることから土地の名前を取って桟留革と呼んだ。高価なことから大名への献上品に使われ、始めは甲冑などに使われ始めたという。この漆をぬった牛革を別名黒桟(くろざん)と呼ぶ。具足には剣道具も含め、鹿皮など何種かの皮が使われている。その中には鞣した鹿皮に漆を付けた印伝の原形とも言えるものがあった。
印伝とはインドから伝わったという意味である。中村氏は昔からの製法を守り、印伝の製法も黒桟等も手で皺って漆を付けている。又、中村氏は
皮を仕上げるにあたって丈夫に表面を滑らかにする為にコテで焼締めて包丁でならし削る昔ながらの作業を行うが、他社はほとんどが細かいヤスリで削って、その後安定材を塗布し絞めているという。又、皮を煙りで燻す方法は昔甲冑をたき火の側においておくと丈夫になったという経験から新たに日本で開発された独自の技術という。中村氏は日本における皮の加工技術、印伝までの全ての流れをここに見せてくれる。ましてや黒桟は日本で一人しか出来ず全国の武具家を一人で扱かい八面六臂の活躍である。昔は作業が分業であったが職人がいなくなって今は何でも一人でやらなければならないという。インドから渡り、武具皮から始まったことを考え印伝を見る時、中村氏の印伝は正統派とも言える、まさに系譜をみせる本物であり、多忙でなければさらに色々な皮製品も生まれてくるのに残念でならないならない。などと勝手なことを考え、中村氏が作る一連の皮を他の職人と組んで何か出来たら面白いと思っている。
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