きゅう漆の職人である。きゆう漆とは漆工程の中で仕上の加飾部門に属する。仕上の例をいくつか紹介したい。“塗り立て(花塗)”という塗り放しの仕上は漆に油を含ませて塗る方法である。“真塗り”は、油を含ませないので塗った人の刷毛あとや技量がそのまま出る。“呂色(蝋色)”は油を含まない塗りを研ぐことで味を出す。その上に“摺り漆(拭き漆)”を7〜8回行なう。仕上りは蝋のようなしっとりした艶と深みを持つ。各工程では磨く炭の質を変える。“拭き漆”は木目等を見せる為に行う技法としても有名である。江戸指物、武家屋敷派はこれである。その他“変わり塗”や加飾と言われる“各種の蒔絵や螺鈿”がある。
こうした仕上の技を生かしながら最高を引き出すのが仕上職人である。中氏はこうした全ての仕上技に精通している。修業は名工と言われた邑田保次氏に弟子入りした関係から、呂色仕上を得意としている。輪島塗の中にあって技が確かな職人のひとりである。又、今の時代に伝承技を活かす数々の挑戦を行う。未来と過去との狭間を繋いでいく。 |