薩摩半島から約50k、東シナ海に浮かぶ甑列島の夏は大きな芙蓉の花の白やピンク色で染まる。ピーダナシ(ピーが芙蓉、方言で芙蓉布物の総称)明治の始め頃までは作っていた。
それからおよそ100年途絶えていた。何と中村氏50歳の頃、氏の母親が作った赤紫色のピーダナシを見た民族学者の下見敏見先生が”世界でただ一枚の気品”と注目し新聞で紹介した。中村氏の創作意欲に火が付き、試行錯誤か始まった。
13年間の戦いであった。元気の秘訣は誰か何と言おうとこうと決めたらやり続ける事、好きな事をやっていれば食べる事を忘れても体調が少し悪くても吹き飛んでしまうという。せっかく名工会のお話を頂いたのでと穏やかに語る南の島の職人である。以下は名工会で資料から抜粋した。
芙蓉布は50歳からの試行錯誤、ひとつずつ研究しながらの13年間、一歩一歩の積み重ねと言う。今でも11時頃まで毎晩糸を紡ぐという。
日本で唯一の芙蓉布。繊細な輝きと、ふんわりした色味が特徴。
村の女性が憧れ、一番のおしゃれとしてきたピーダナシ、着物が中村氏の手により、蘇った。
沢山の楽しいアイディアが次から次へと浮かんで来ると言う。中村氏と共にこの織物を島のシルバーライフに役立たせたい等、夢は多面に広がっていく。
今は娘さんが技を伝承し熟達しており、製品作りに興味を持って参加している。
職人名
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中村悦子(なかむら・えつこ)
雅号又は銘
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生年月日
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大正10年5月15日
職種(種)
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甑島芙蓉布(こしきじまふようふ)
作品(アイテム)
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技数(積)
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弟子入りしてから手伝えるような状態になるまでの期間
10年。芙蓉の幹を刈ったりするのが重労働なので若い人達にお願いするとの事。
畑に芙蓉を挿し木したので3年後が楽しみと語る。それと染料はヨモギやシソ、桜の皮、淡いピンクは芙蓉の花と言ったように自然そのもの。昔の色合いを伝承している。
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技の種類や工程
梅雨期に芙蓉を採取、幹に水分を含んでいる時が皮剥ぎがいい。川に穴をほり、川を埋めて一ヶ月熟成、繊維を柔らかくする塵取り。灰汁で煮ることで艶と柔軟性を引き出す。
乾燥、染色、糸紡ぎ、手織り、加えて製品作り。
現在の立場(役)
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生涯現役
次代 他
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