職人の住む町
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親方の得意とする技は染料立てである。手ぬぐいの色に納得出来る色を出す。注文者の色が気に入らなければ、それはそれで染めて、別に親方が考えた色でも染めると、ほとんどの注文者が親方の方を選ぶという。又、手ぬぐいの難しさは柔らかな布への多色染めにある。
図柄を染めあげる技であるが、一般的にはこうした見える技の素晴しさが常に評価の対象となる。もちろん否定はしない。しかし職人の真の実力を判断する技は、むしろ一見単純な技、その人しか出せない技に真価が現われる。親方の染料立て(色を出す技)がそれである。手ぬぐいの色目は、良い手ぬぐいであればある程、仕上がりに大きく作用する。ボカシ、渋い枯れた色、時代色、、、中でも凄いのは灰色である。
過去多くの手ぬぐいを見てきたが常に親方の灰色は勝っていた。今まで見ていた物は色に力のない灰色である。それに対し堀川色と言わせてもらうが、色に力とほのかな艶があり、灰色としての存在感をしっかり見せている。親方の技は至る所に秘密が活かされているようである。浴衣地と比べ手ぬぐいははるかに存在感がなく、しかも伸びる素材であり、他の染め物とは又違った難しさがあると言う。色、図柄共に力作が持ち込まれると、的確な色を再現してあげられるよう、いつも早朝に染料立ての計画を練るという。
親方の工場には、先代から染料たてから染め付けを行ってきた50年以上のベテラン渡辺氏がいる。そして糊かきを行っている石井氏など優れた職人が何人かいる。親方とは強い信頼関係で繋がっている。こうしたベテランの中で華奢な若い娘が働いていた。自分の染め物を追求する意識が旺盛と聞く。女性の感覚を活かして頑張ってほしい。楽しみである。
堀川氏が修行した時代は朝の3時から始まり14時か15時には終了した。雨の日は仕事が休みである。その頃の職人はよく遊んだと言う。当時、呉汁といって大豆を前日から浸けたその汁を染め物に使うが、そうした雨などにわかの休日には、この大豆を煮た物を食べさせられる。毎日続くことから嫌いになったという。
職人として誇りが持てない仕事や、常識のない人の仕事は受けない根っからの職人気質を持っている。現在、有名でびっくりするような手ぬぐい店の大半や相撲取りの浴衣など部屋から直接注文など、かなり多くの仕事を堀川氏の作業場で作っている。

  安政元年に創業した。昔は紺屋から始り、父の代に当時の人間国宝に技を教わった。私は子供の頃から手伝わされていた。正式には22才から始まった。藍染め、糊かき、染料たて、全ての調合など、父の素晴しい仲間の職人等から盗んでいいとのことで、そこで働いて覚えていった。
  粋といなせを心掛けていくと、流行色より伝統色に挑戦することになる。これが面白く、今の時代には意義もあると思える。そして色際の冴やボカシそして丁寧な仕上げから色に艶を出すことを心掛け実行している。
 
   
  最近はお稽古的に教わってしまう人がいるが、むしろ昔のように盗む方式で自ら研究し試行錯誤を重ねていくことが大切です。そこに自分なりの蓄積も出来、自分の技も生まれます。

 

職人名 掘川末吉(ほりかわ すえきち)
雅号又は銘  
生年月日 昭和9年4月23日
職種(種) 手ぬぐい、浴衣
作品(アイテム) 浴衣、手ぬぐい、のれんなどの染め物
技数(積)
弟子入りしてから手伝えるような状態になるまでの期間
技の種類や工程
〈のりかき〉糊かきは夏場は腐るのでやれなかった。又雨が降ると仕事は休みとなった。糊の硬さと粘りが難しく、むらになったり滲んだりがあり、天候により内容を変えたり柄によって変えたりと糊のかきかたが難しい。手ぬぐいは両面染めであり、片面とは違った難しさがある。又、洗い時に綺麗にはがれる事も技といえる。
〈染料たて〉色を出すのが難しく、微妙なブレンドで良し悪しが決まる。色は昔から流行に左右されない色を出している。しかし現在は昔の色を知っている人が少なくなり本物の色を出せない染め物屋も増えている。仕上がりの違いをみて技術的に妥協せず良い物だけを出荷する。現在全ての工程に精通している親方は少なく、その面で昔の技も生かしながら全体の技を管理していく事が出来てはじめて良い物が出来る。ほしい。昨今藍をなめて配合など調子を見る人が多いが昔は棒でかき回して見るだけで分る人が結構いた。藍染めを専門でやっている工房などを見学すると甘い技術に愕然とするときがある。又、色の名前には由来があり、現代の色とは大分違っている事もある。知っている限りではその辺まで考えている染め屋は少ない。金銀などの色もたてる事が出来ます。
〈染め〉注染(ちゅうせん)という染めかたで一反づつ染めていく。
実際には浴衣より手ぬぐいの方が布が伸び縮みする為簡単にずれる為ここも技であり、失敗しない事が職人の腕といえる。
〈事後処理〉手抜きで色落ちするような手ぬぐいを作っている工場もある。色を安定させるのは職人としての当然の事であり、どんな簡単な染めでも手は抜かない。色の艶が違ってくる。
染料はスレン染料を主に使っている。洗い水槽で流しながら行っている。
現在の立場(役) 重要部分参加、指導的立場、経営管理
次代 他  


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