職人の住む町
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特に興味を持って見たのが意外に認識されていない江戸更紗であった。江戸小紋を染める職人も少なくはなったが更紗程少なくはない。技法も染めに手間がかかる為、工房の数が最も少ない。全国でも数軒ではないかと思う。綺麗な色、複雑な模様、シルクロードの歴史的ドラマを内包するその素晴しさは口では表現できない。小紋の特徴は明確に言えても更紗の特徴は言いにくい。とにかく実物をお見せ出来ないの残念である。友禅や小紋などと同様の歴史を持ちながら、着物業界の売りの手法から、冠婚葬祭用からも外れ、展示場でも常に片隅に追いやられ続けてきた。多分江戸の型に染まらずに良さと美しさ、技法を守り続けてきたからであろう。従って、意識されない分、他の染め物ほど決まり事の束縛がなく作者の感性が物を言う、技を発揮できる染め物と言える。親方の伝統を守る心は、興味を持たれ、好まれていくことを大切にし、常に初めて出会ったような作品作りを心がけている。更紗を見ているとなるほどと納得させられる。
又、更紗はかしこまって着るものではなく、洒落物と言われる染めものである。
前述の意味から若い人達の感性と合致しやすい可能性を大いに秘めている。今、一般的にはジャワ更紗程度の知識しかないことが残念である。頑に技法を守る一面と、新たに挑戦する一面とを交えて伝承する4代目に期待するものは大きい。

  職人の張る伸子(シンシ)が返る時、太鼓のように張った布が規則正しく響き、子供の時から朝はその音で目がさめました。その昔、神田の紺屋町からスタートしたあたりからは聞いています。現在の場所では大正9年からの屋号となっています。
小紋や更紗は本来分業でした。職人の数が少なくなり次第に一つの工房でやる必要性がでて来ました。ベテランの職人が少なくなって来ますと、外注では思うような結果が得られないことも多くなって来まして、必要に迫られて全ての工程を行うようになりました。この事は自分なりに納得出来る事と、お客様の要望とこだわりに対し、近付けられることが可能となり、私どもの過去の歴史の中では理想に近い体制で臨んでいます。
又、近年、問屋が輸入物に押され始めて来た時ですが、対抗するために出来るだけ安く販売する事に力を注ぐようになり、製造社の圧力から粗悪になっていきました。私達はお客様の声が直接聞こえて来ませんからその通りにしました。
ある時、直接声がかかり、お客様からこんな素晴しい更紗が出来ないのかということでお話  を頂きました。驚いたことに私どもで作ったものでした。このままでは技術がダメになる、応援者がいる、手抜きをせずにやろうということになり、それを機会に100反という注文を送り返し、問屋ルートとそこに繋がる関係者全てを断ち切りました。いくら頑張ったところで染められる量には限界があり、それなら良い物を作りたいとの考えで一致しました。独自の道を歩き始めることは覚悟のいる判断でした。良いもの、本物だけを作る体制を土台にし、それをフォロー出来る物作りと合わせて平行作業を行い、本物を活かせる体制と、収益を考えながらの明確な体制をひき、且つ直接小売店を歩き回わって反応を聞きながら活きた物づくりを進めています。
  お客様に喜んでもらえる技、その為に職人として全ての技に目が届く体制、外注をせずに一貫した流れを大切にする他にない体制がまず特徴です。何より要求やこだわりに応えられる体制を作りました。声が聞こえる距離にいることで、30代の若い感性にも応えられるものになって反響に驚いています。それと江戸更紗を知らない為、知って頂く上でも大切な事でした。
 
  着物を売る為に常に冠婚葬祭に絡め、様々なしきたりの様なものを作って来ました。訪問着であるとか、洒落着であるとか色々と決めてしまっ為に逆に自由な発想が削がれ小さくまとまってしまった反省が業界にあり、もっと自由な発想を提案出来るようにしようといった流れかあります。こうした考え方は、私どもではお爺さんの代から洒落物を扱っていたせいか早かったようです。
常に言っていたことは『生活習慣の中で、玄関から素のままで出てくる気楽さで着物を着るイメージを考えよう』ということでした。常にお客様が着物を着て喜んでもらえるところまで行って、職人として完結するということです。それを全員で意識しています。とはいっても難しさは沢山あります。我々職人のイメージする色感覚に差があることです。常におつき合い出来るお客様がいることは、例えばどんな赤が好みなのか即わかるといたことも有り難いことです。
  伝統を正しく守る事、それが出来る体制作りも大切です。そうした中で明日咲くつぼみを育てている気持ちでいます。従って伝統は壊すものではなく活かすことです。常に伝統は学ばなければなりません。

 

職人名 小林文次郎(こばやし ぶんじろう)
小林元文(こばやし もとふみ)
雅号又は銘  
生年月日 昭和4年6月27日(文次郎)
昭和40年11月28日(元文) 
職種(種) 江戸更紗
作品(アイテム) 江戸更紗、江戸小紋、アクセサリー等
技数(積)
次代、素人から始めて手伝えるような状態になるまでの期間
6年で一つの専門分野が扱えます。
技の種類や工程
特に更紗は同じ工程が作品により繰り返される為、基本的な製作手法のみ表示します。
工房での染めは小紋と更紗を扱っています。ここでは 特に複雑な染めとなる珍しい更紗を説明いたします。
図案作成ー型彫り(型紙を作る。)白生地(絹、綿織物)−地染め(引き染め・裏に伸子(布を張る道具)を渡し 豆汁(ごじる)を塗る。先に下柄を付ける時は柄部分に型紙を置き防染糊で封じます。)型摺り染めー(地張り・台に生のりで生地を張って固定。糸目摺リ・糸目とは模様の輪郭線を型紙を使って摺る。目色摺り・型紙の指定枚数を使い色をさしていきます。)
蒸しー蒸して染料を定着させる。色も安定発色させます。
水洗いー余分な染料を洗って流す。昔は川で流しながら洗っていました。
乾燥−乾かして出来上がり。
現在の立場(役)  
次代 他  


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