日本で唯一と言っても良い本格的な桑師であろうか。指物師にとって材料として一等いいのが桑であり、昔から桑師と言い最も粋な指物師の花形であった。現在も尚桑の原木を仕入れて作っているのは江戸広しと言えど唯一親方だけである。又、一級ランクの指物師でありながら、謙虚で指物などの展示会においても作家風を装う者が高い価格を付けていても頑固に自分の生き方を貫く。展示会などに見に来るお客さんには高いほうが良い様にとられてしまう危険もある。展覧会に出品したりするタイプの職人さんとは違うのかも知れない。出品する人を非難している訳ではないのでくれぐれも誤解の無いようにお願いしたい。氏は、分ってくれる人達の口伝えで知られ、客は親方を知っている事で自慢になるような職人さんである。又、塗師が少なくなり、奥さんが始めた手伝いであったが、既に立派な職人となっている。現在は親方の作品の拭漆は全てこなしている。桑師ゆえに今回紹介する中にも桑の作品が揃っている。一般的には桑材はその都度板を買って作る職人が多いので通常個展を行う時ぐらいである。作った桑物、箱鏡台や宝石箱など、普通この価格帯では絶対に付かない銀の金具が付いている。こだわりではなく親方が納得できる仕事をした結果そうなった。素晴しい桐の大木もあった。良い柾目がとれると言う。婚礼箪笥を頼まれておりこれで作る。指物師の箪笥と箪笥職人の箪笥(箪笥を専門に作る職人)、家具会社の箪笥との違いを聞いてみた。指物師はきっちりと組合わせて、釘類は一切使わず指物の技で作る。 箪笥職人は組合わせと隠し釘を使い丈夫に作る。家具会社は単に売る為の面の見せ方にこだわり、裏板は合板を使う。見えないところはピンタッカーで止め安く作る。衣装を守るのが箪笥であり、その機能を持っているのは指物師と箪笥職人の箪笥だと思った。棒の継ぎ手が下記写真にあるが、一般的には挟んで繋ぐ方式がとられている。指物師のものは差し込む形式で組まれている。親方の所に修理に来る家具のほとんどが挟んで繋ぐ方式であると言う。木村氏の過去のものは全く修理に戻っては来ない。永久保証の技を持った日本で唯一の桑師と言いたいざっくばらんな性格でありながら誇り高き職人である。
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