秋田県阿仁町には独特の戒律を受け継いできた誇り高きマタギの里があります。
マタギ鍛冶、西根登親方を語るには、親方の本家である三代目西根正剛であった西根稔親方を語らなければならない。西根正剛(まさたけ)は又鬼(またぎ・狩猟の民)鍛冶の銘であります。残念ながら西根稔親方は、2001年61才で亡くなりました。
昔からのナガサ(またぎの山刀)は出刃包丁のようで、かなり大きく使いにくいものであったといいます。もう少し軽快に使えるナガサが出来ないものかと考え実行に移した若きマタギが30代の頃の西根稔親方であります。護身用に持ったこのナガサで熊と格闘し、3頭の熊に止めを刺したといいます。実用一点張りのナガサは、現存する古来の日本の刃物として使われている点では、唯一のプロの狩猟道具と言えます。マタギの魂がこの山刀フクロナガサ(柄の部分も金属で筒状になっており、柄に木を差し込んで槍のようにも使える。)に込められています。
侍の魂と同様のマタギの魂、ナガサ。言い換えれば、マタギの誇りを造る唯一の鍛冶であります。14代マタギの松橋頭領によれば、使い始めより何度も研ぎ直して2年目ぐらいからが最高の切れ味が出てくると言う事でありました。西根鍛治は山里であり、ナガサの他にも、様々な技を要求されます。マタギの道具、山の道具、鎌、鍬、ヤスなども有名です。
野鍛冶の仕事全般の刃物を火造ります。従って技の種類や工程は造るものによって大きく異なります。
故 西根稔親方
|