名工会の中で、印象的且つ最高の職人のひとりであったのが圭一親方の父、先代である。残念ながら数年前にガンで急にお亡くなりになりました。元気な時、電話で語ったさりげない言葉『“現代の名工”
になったけど、自分のような若い者でいいのかと思っているよ。でも折角頂いた話ですから・・。』羞恥心を交えて語っていた。
実に物静かで謙虚であった。当代と初めてお会いしたのは6〜7年前である。その時、先代は元気にロクロをまわし削る工程をしていた。後ろで同じ作業をしていたのが当代である。
たまに手を休めて語る圭一さんの姿勢は、技術的に不安を感じさせない物腰であり、先代に負けない職人になる予感がした。事実、先代の作品を継承し見事である。
“手がけている”と言う意識が強い作品、器の漆絵も全て手描き、その作風が器に的確で、手を抜かないことを常とした親方の誇りが見える。当代も先代と一緒である。
加えて、異なる風情が既に作品に現れている。依頼主の屋号を入れたり、最高級の品物しか扱わない和光(デパート)から依頼されたりと幅が広がってもいる。
当人曰く、『先代に近づくにはまだまだ、特にその速さがと手際が違います。しかも技にブレがなく、出来た器は、私が丁寧に仕上げたもの以上でした。』名工たるゆえんである。
それを除けば、先代の名声を汚すことなく心から作っているのが圭一親方、作品のレベルは全く変わらない。現在の職人の中に入れば若手になるのか、元気な江戸の錫器職人である。今後の活躍が期待できる。ともかく名工会は応援である。
■ 歴史
1200〜1300年前に製法が中国から伝えられた・・とある。 |