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私は物を作るのが子供の時から好きでした。始めは料理の仕事をしました。実の兄貴は専門家用の工業筆の職人でしたが、
事情が出来て弟子入りした訳です。
習字用や文字用の筆ではなく蒔絵や面相筆などで、駄目な物ではその仕事自体が成り立たない世界です。従って非常に多くの物を教わりました。 |
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今の時代、質の良い毛を集めていくのが難しくなっています。日本の動物もいなくなって馬の毛一つにしても中々手に入らない。理想は大きな日本の農耕馬(駒馬とも言っている。)であるが、毛質が素晴しい。
それと筆作りの難しさは、使う目的によって正反対の筆質が要求される為、買う側もしっかりとした考えがない場合は筆屋にまかせた方がいいですね。結局筆屋との関係は使ってみなければ分らない訳ですから何をどうしたいのかを知らせて欲しいです。筆作りは難しい反面、楽しいものです。色々使っては悩んでいる人の求める形を特注で作ります。作っているうちから、鼻をあかしてやるつもりだから、うまくいって“ざまあみろ”と言った感じかな。楽しいよ。
それと金を生み出す工業筆と月謝を払って習いに行く半紙用の筆、かなと漢字、作品によっても違います。絵師や書家が作品を書く時の筆も皆違います。毛の量、筆形、筆圧、かすれ、材質、動物の雄雌、そしてどの部分の毛なのかといった毛質など、全て目的によって変えて行きます。
ベテランの江戸筆の職人は、勝負する時の毛はストックとして 必ず箪笥貯金をしています。この毛は筆職人自身がここぞといった時にしか使いません。止め、跳ね、払い、三つの基本の表現が違います。
初めての人、ベテラン、作家、書家、使う側と作る側が一つになって筆の味も質も分るものですから、レベルの違う高望みの筆はお断りし、その人の時点で最も適した最高の筆を紹介しています。 |
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材質に妥協するな。これは親方の口癖でもあった。私もそうしています。納得して楽しく良い気分で作ることで、全ての姿勢に通じてきます。 |
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江戸筆は、根元まで下ろして使います。これは大きな特徴で筆がしっかりしていないと出来ません。それと江戸筆は全ての工程を一人の人間が一貫して責任を持って作ります。良い筆を作るには分業では出来ません。 |